PubMedID 26038313
タイトル RNautophagy/DNautophagy possesses selectivity for RNA/DNA substrates.
ジャーナル Nucleic Acids Res, 2015 Jul 27;43(13);6439-49,
著者 Hase K, Fujiwara Y, Kikuchi H, Aizawa S, Hakuno F, Takahashi S, Wada K, Kabuta T
  • RNautophagy/DNautophagyの基質選択性
  • Posted by 国立精神・神経医療研究センター 神経研究所 疾病研究第四部 長谷勝徳
  • 投稿日 2015/08/05

最近発表しました論文を紹介させていただきます。

私どものグループは、RNautophagy/DNautophagy(RDA)というリソソームがATP依存的にRNA/DNAを直接取り込み、分解するシステムを見いだし研究しています。これまでに、リソソーム膜タンパク質であるLAMP2Cが核酸と直接結合し、RDAのレセプターの1つとして機能することも報告しました。本研究では、これまで不明でありましたRDAにおける基質核酸の選択性の有無を解析しました。

上記の選択性を明らかにするために、まず単一の塩基から成る4種類の1本鎖RNA、poly-A,U,C,Gを作製し、プルダウンアッセイによりLAMP2Cの核酸結合配列(細胞質配列)との結合性を調べました。その結果、LAMP2C配列はpoly-Gと顕著に結合し、poly-A, U, Cとは結合しませんでした。さらに、単離リソソームを用いたin vitro 核酸取り込み実験を行ったところ、poly-GはATP依存的にリソソームに取り込まれた一方、poly-A, U, Cは全く取り込まれませんでした。DNAについても同様の結果が得られました。

また、LAMP2Cとの結合に必要なpoly-Gの長さを検討したところ、RNAについてはGGGGGG、DNAについてはd(GGGG)が必要であることがわかりました。また2本鎖DNAについても検討したところ、poly-(dG:dC)もLAMP2C配列と結合し、in vitroで単離リソソームに取り込まれたのに対して、poly-(dA:dT)はLAMP2Cと結合せず、単離リソソームにも取り込まれませんでした。

以上のことから、少なくともin vitroにおいてRDAは基質選択性を有することが初めて明らかになりました。また、その選択性は核酸受容体によって決定されるということが強く示唆されました。


論文内では、さらにGCリッチなリピート配列についても検討しました。その結果d(GC)、d(GGCC)、d(GGGCCC)リピートをもつ2本鎖DNAはLAMP2Cと有意には結合せず、d(GGGGCCCC)、d(GGGGGCCCCC)リピートをもつ2本鎖DNAは結合しました。また、GGGGCCリピートRNAはLAMP2C配列と結合し、in vitroで単離リソソームに取り込まれました。以上の結果から、G/dGの連続配列がRDAにおける基質核酸のモチーフの1つとして機能していることが示唆されました。ただし、他にもモチーフはあると考えています。また、G/dGの連続配列はG-quadruplexと呼ばれる4量体構造を取ることが知られており、このような立体構造がLAMP2Cによる核酸認識に関わっている可能性も考えています。

実験に用いたGGGGCCリピートRNAに関してですが、GGGGCC リピートはC9ORF72遺伝子のイントロン中に存在し、このリピートの異常伸長は神経変性疾患である筋萎縮性側索硬化症の原因として注目されています。現在GGGGCCリピートを含むRNAの存在が疾患の主原因の1つとなっていると考えられており、RDAがこのようなRNAを細胞内で分解処理できるのかに関しては今後の研究が必要です。