PubMedID | 26296886 |
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タイトル | Protein N-terminal Acetylation by NatA Is Critical for Selective Mitochondria Degradation. |
ジャーナル | J Biol Chem, 2015 Aug 21; [Epub ahead of print] |
著者 | Eiyama A, Okamoto K |
- NatAによるタンパク質N末端アセチル化を介したマイトファジーの制御
- Posted by 大阪大学大学院 生命機能研究科 英山 明慶
- 投稿日 2015/08/28
私たちの研究室で最近発表した論文を紹介いたします。
マイトファジーは酵母からヒトまで保存されており、ミトコンドリアの品質と量の管理に貢献しています。酵母においては、Atg32がレセプターとして働き、ミトコンドリアの外膜に局在し、Atg8やAtg11と相互作用することでマイトファゴソームが形成され、ミトコンドリアの分解が進行します。このAtg32を中心にマイトファジーの分子メカニズムの解明が進んでいますが、Atg32の発現誘導の制御や、マイトファゴソーム形成の制御についてなど、未だ不明な点も数多く残されています。本研究ではマイトファジー制御に関わる新規因子として、タンパク質N末端アセチル化酵素の一つであるNatAを見出しました。NatAは、触媒サブユニットArd1とアダプターサブユニットNat1で構成され、リボソームと結合し、新生ポチペプチド鎖N末端の2番目のアミノ酸残基に対して、アセチルCoAからアセチル基を転移させます。このタンパク質翻訳時修飾により、発現・局在・相互作用など、タンパク質の多様な機能が制御されていると報告されています。
私たちは、NatAの各サブユニット、Nat1とArd1を欠損させた細胞で、マイトファジーが強く抑制されることを確認しました。加えて、Ard1の酵素活性が欠失する変異を入れても、同様にマイトファジーが強く抑制されました。このことから、マイトファジーの進行にはNatAによるタンパク質のN末端アセチル化が重要であることが示唆されました。また、NatA欠損細胞における他のオートファジー経路への影響に関しては、バルクオートファジーとCvt pathwayには有意な変化は見受けられませんでしたが、ペキソファジーには抑制が確認できました。
NatA欠損細胞ではマイトファゴソームの形成に異常があることから、NatAはマイトファジーの隔離膜形成以前の制御に大きく関与していることも示唆されました。そこで、マイトファゴソーム形成に必須な因子であるAtg32の機能解析をNat1、Ard1欠損細胞で行ったところ、Atg32の発現がタンパク質レベルで部分的に抑制されることを確認しました。また、転写レベルだとより顕著に、mRNAの量が減少していることがわかりました。一方、Nat1とArd1の欠損細胞でAtg32の発現量を上げた場合、マイトファジーが部分的に回復することも確認しました。このことから、Atg32がNatAとマイトファジーの間を介する因子の一つであると考えられます。しかしながら、NatAは直接的にAtg32に作用しないことが示唆されています。したがって、NatAの基質タンパク質がAtg32の発現誘導ないし、マイトファジーの制御に関与していると考えられ、これらの因子の同定とその作用機序の解明が今後の課題です。