PubMedID 26438722
タイトル Phospholipid methylation controls Atg32-mediated mitophagy and Atg8 recycling.
ジャーナル EMBO J, 2015 Oct 5; [Epub ahead of print]
著者 Sakakibara K, Eiyama A, Suzuki SW, Sakoh-Nakatogawa M, Okumura N, Tani M, Hashimoto A, Nagumo S, Kondo-Okamoto N, Kondo-Kakuta C, Asai E, Kirisako H, Nakatogawa H, Kuge O, Takao T, Ohsumi Y, Okamoto K
  • リン脂質のメチル化 - 選択的ミトコンドリア分解を制御する新たな細胞内経路の発見
  • Posted by 大阪大学大学院生命機能研究科 岡本浩二
  • 投稿日 2015/10/08

 選択的ミトコンドリア分解(マイトファジー)の制御に関与する新たな細胞内経路が、当研究室の榊原特任研究員らによって明らかにされました。この成果は、The EMBO Journal(10月5日付けオンライン版)に掲載されました。

 酵母のマイトファジーは、ミトコンドリアでのATP合成が細胞の増殖に必須な非発酵性の培地において、細胞が増殖を止める時期に誘導されます。この際、酸化ストレスの増加に応答してAtg32の発現が上昇し、ミトコンドリア外膜に局在するとともに、Atg8およびAtg11をミトコンドリア表層にリクルートします。このAtg32-Atg8-Atg11複合体が起点となってミトコンドリアがオートファゴソーム内に隔離され、最終的には液胞(酵母のリソソーム)に運ばれて分解されます。

 今回の研究では、リン脂質メチル化酵素Opi3の欠損でマイトファジーが強い障害を受けることを見出し、その原因を探りました。その結果、?リン脂質メチル化の制御を介してAtg32が誘導されること、?脱脂質化によって再利用される遊離型Atg8がマイトファジーに重要であり、リン脂質メチル化の異常はAtg8-PMME(PEにメチル基が1個ついたリン脂質)を蓄積させAtg8の再利用を破綻させること、そのためミトコンドリアを隔離するためのオートファゴソーム形成が阻害されることが明らかとなりました。興味深いことに、試験管内再構成系を用いた私たちの実験から、哺乳類Atg8ホモログもPMME化されること、一方でAtg4による脱PMME化は受けにくいことが示唆されています。これらの結果は、リン脂質メチル化の適切な制御が、ヒトのマイトファジーやオートファジーにも重要である可能性を提起しています。