免疫応答の質的制御に関わるサイトカイン受容体のタンパク質分解機構の解明
九州大学 生体防御医学研究所
免疫遺伝学分野 教授
福井 宣規
IL-4はTh2細胞への分化に必須のサイトカインであり、IgEの産生を介してアレルギー反応に関わることが知られている。IL-4は、IL-4R 鎖とcommon 鎖からなる受容体に結合することで、STAT6 のリン酸化を初めとする一連のシグナル伝達経路を活性化するが、IL-4受容体のタンパク質分解を制御するメカニズムは不明である。
DOCK2は線虫のCED-5、ショウジョウバエのMyoblast Cityの哺乳類ホモログで、免疫系特異的に発現する分子である。我々はこれまでに、DOCK2がリンパ球の遊走や免疫シナプス形成に不可欠なRac活性化分子であることを明らかにしてきたが、この過程で、DOCK2欠損T細胞では抗原刺激に伴うIL-4R 鎖のタンパク質分解が障害されていることを見いだした。本研究は、IL-4R 鎖のタンパク質分解の制御機構とそれにおけるDOCK2の役割を解明にすると共に、アレルギー発症との因果関係を個体レベルで明らかにすることで、免疫応答の'quality control'におけるサイトカイン受容体のタンパク質分解の重要性を実証する。
本研究課題に関連する代表的論文3報
- Tanaka Y, Hamano S, Gotoh K. Murata Y, Kunisaki Y, Nishikimi A, Takii R, Kawaguchi M, Inayoshi A, Masuko S, Himeno K, Sasazuki T, Fukui Y: T helper type 2 differentiation and intracellular trafficking of the interleukin 4 receptor-α subunit controlled by the Rac activator Dock2. Nature Immunol., 8: 1067-1075, 2007
- Sanui T, Inayoshi A, Noda M, Iwata E, Oike M, Sasazuki T, Fukui Y: DOCK2 is essential for antigen-induced translocation of TCR and lipid rafts, but not PKC-q and LFA-1, in T cells. Immunity, 19:119-129, 2003
- Fukui Y, Hashimoto O, Sanui T, Oono T, Koga H, Abe M, Inayoshi A, Noda M, Oike M, Shirai T, Sasazuki T: Haematopoietic cell-specific CDM family protein DOCK2 is essential for lymphocyte migration. Nature, 412: 826-831, 2001
ひと言!
タンパク質分解は私にとって初めての研究分野となりますので、班員の先生方のご発表を参考にさせて頂いて研究を進めていきたいと考えております。当初目標の7割は上記論文1で達成できましたので、今後は免疫シグナル伝達全般を対象に研究に取り組んでいきたいと思います。
Web page
http://www.bioreg.kyushu-u.ac.jp/iden/
▲このページの先頭へ