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Wntシグナルの転写因子Lef1のタンパク質分解の制御機構と生理学的意義の解明

写真:石谷太

九州大学 生体防御医学研究所
細胞統御システム分野 特任准教授
石谷 太

Wntシグナル伝達系は、「動物の体の形態形成」、「幹細胞の増殖」、「癌の発症」に関わる重要なシグナル伝達経路である。Wntシグナルの機能と制御の解明は、将来的な新たな医療技術の開発や創薬につながると期待されており、世界的に最もホットな研究課題の一つである。Wntシグナル伝達系は、細胞が細胞間情報伝達分子Wntを受容することにより活性化する。Wntシグナルが活性化した細胞では、転写因子Tcfが標的遺伝子の転写を誘導する。私たちは最近、「(1)Tcfファミリーの転写因子Lef1がユビキチン-プロテアソーム系によって分解されていること」、「(2)シグナルタンパク質NrarpがLef1の分解を阻害し、Lef1を安定化すること」、そして「(3)NrarpによるLef1分解の回避が神経堤細胞の発生に関わること」を見出した。この発見は、Wntシグナルの新たな制御機構の発見であり、非常に興味深い。しかし、Lef1の分解の制御機構は分子・個体いずれのレベルにおいても未だに理解が不十分であり、Lef1にユビキチンを付与するユビキチンリガーゼさえも不明である。
本研究においては、脊椎動物個体(ゼブラフィッシュ)を用いた細胞生物学的及び遺伝学的解析と生化学的解析を組み合わせて研究を行い、Lef1タンパク質の安定性の制御とその意義を分子・細胞・個体の各レベルにおいて解明することを目標とする。

本研究課題に関連する代表的論文3報

  1. Ishitani T, Matsumoto K, Chitnis AB, and *Itoh M.
    発表論文名 Nrarp functions to modulate neural crest cell differentiation by regulating LEF1 protein stability. Nature Cell Biology 7巻(11号) ・ページ1106-12 ・2005年
  2. Ishitani T, Ninomiya-Tsuji J, Nagai S, Nishita M, Meneghini M, Barker N, Waterman M, Bowerman B, Clevers H, Shibuya H, *Matsumoto K.
    発表論文名 The TAK1-NLK-MAPK-related pathway antagonizes signalling between beta-catenin and transcription factor TCF. Nature 399巻(6738号)・ページ798-802・1999年

ひと言!

私は現在、ゼブラフィッシュを用いて、Wntシグナルの機能と制御の解明を目標に研究を進めております。本研究領域に参加させて頂くことにより、是非とも専門家の皆様より蛋白質分解の最新の知見や解析手法を学ばせて頂き、それをもとに自身の研究をさらに発展させていきたいと考えております。またその一方で、「最も遺伝子機能阻害が容易に行える脊椎動物」であるゼブラフィッシュの有効性を当研究領域の皆様に紹介させて頂きたいと思います。そしてこれにより、当領域における「蛋白質分解の個体レベルの機能解析」の研究の促進に少しでも貢献できれば幸いに思います。

Web page

http://hyoka.ofc.kyushu-u.ac.jp/search/details/K003216/index.html

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