タンパク質分解制御による酸化ストレス応答機構の解明
東北大学 大学院医学系研究科
医化学 准教授
小林 聡
本申請課題では、生体の酸化ストレス応答におけるKeap1-Nrf2システムの制御機構の解明を目指す。Nrf2は、酸化ストレス応答遺伝子の発現を強力に誘導する転写因子であり、一方、Keap1は酸化ストレスセンサーとして機能し、Nrf2の活性を制御している。最近我々は、Keap1は、さらにCul3型ユビキチンライゲースのアダプターとしての機能も持ち, Nrf2をユビキチン-プロテアソーム依存的にすみやかにタンパク質分解していることを明らかにした(Kobayashi A. et al. (2004) Mol. Cell Biol.)。さらに,酸化ストレスによるNrf2活性化機構の実態は,Keap1-Cul3ユビキチンライゲース複合体によるユビキチン化反応の阻害によりもたらされている可能性が高いことを見出している(Kobayashi A. et al.(2006) Mol.Cell Biol.)。本研究では,この酸化ストレスによるKeap1依存的ユビキチン化反応の阻害機構を分子生物学的解析と構造生物学的解析を併用し明らかにする。これらの解析を通じて,タンパク質分解機構がもたらす生体のすみやかなストレス応答の分子基盤を理解する。
本研究課題に関連する代表的論文3報
- Kobayashi, A., Kang, M. I., Okawa, H., Ohtsuji, M., Zenke, Y., Chiba, T., Igarashi, K., Yamamoto, M. (2004) Oxidative stress sensor keap1 functions as an adaptor for Cul3-based E3 ligase to regulate proteasomal degradation of Nrf2. Mol. Cell Biol. 24, 7130-7139.
- .Kobayashi, A., Kang, M. I., Watai, Y., Tong, K. I., Shibata, T., Uchida, K., Yamamoto, M. (2006) Oxidative and Electrophilic Stresses Activate Nrf2 through Inhibition of Ubiquitination Activity of Keap1. Mol. Cell Biol. 26, 221-229.
- Sawa, T., Zaki, M.H., Okamoto, T., Akuta, T., Tokutomi, Y., Kim-Mitsuyama, S., Ihara, H. Kobayashi, A., Yamamoto, M., Fujii, S., Arimoto, H. and Akaike, T.(2007) Protein
S-guanylation by the biological signal 8-nitroguanosine 3', 5'-cyclic monophosphate. Nature Chem. Biol.11,722-735.
ひと言!
平成20年4月より、同志社大学に新設される生命医科学部にて研究室を主宰させていただく予定になっております。これまでのKeap1-Cul3システムの研究を発展させつつ、タンパク質分解機構を介した新たなストレス応答機構の研究を開始するつもりです。先生方のご指導を賜りましたら幸いです。
Web page
http://dmbc.med.tohoku.ac.jp/official/index.html
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