神経変性疾患、特にリソゾーム蓄積症の病態形成にオートファジーが果たす役割について
大阪大学 大学院医学系研究科
神経生物学・形態学講座 助教
小池 正人
リソゾームのアスパラギン酸プロテアーゼとして知られるカテプシンDの欠損マウスは、ヒト神経性セロイドリポフスチン蓄積症(NCL)の1型CLN10(OMIM #610127)のモデルマウスである(Koike et al., 2000, 2003, 2005)。同マウスではNCLの診断基準であるgranular osmiophilic deposits (GROD)が蓄積する。このGRODは分解されない基質を有し、細胞質の一部と共に、二重膜構造を持つオートファゴソームにしばしば取り込まれる。すなわち、GROD自身がオートファジーを誘導し、これが異常なリソゾームの蓄積に寄与する可能性を示唆している。私達は、免疫電顕でこのGRODの膜にユビキチンとユビキチン結合タンパク質でMAP-LC3とも結合するp62が局在することを見いだした。このことは、ユビキチン/p62複合体が隔離膜上のMAP-LC3と会合することでGRODをオートファゴソームに取り込むことを示唆している。そこで、カテプシンD/Atg7およびカテプシンD/p62ダブルノックアウトマウスをそれぞれ作成し,GROD形成にオートファジーがどのように働くかを解析し、リソソーム蓄積病の成立機序を明らかにすることを目指す。なお、前者のマウスは生後3週までは生存することを既に確認している。
本研究課題に関連する代表的論文3報
- Koike, M., Shibata, M., Tadakoshi, M., Gotoh, K., Komatsu, M., Waguri, S., Kawahara, N., Kuida, K., Nagata, S., Kominami, E., Tanaka, K., Uchiyama, Y. Inhibition of Autophagy Prevents Hippocampal Pyramidal Neuron Death after Hypoxic-Ischemic Injury. Am. J. Pathol. (in press).
- Koike, M., Shibata, M., Waguri, S., Yoshimura, K., Tanida, I., Kominami, E., Gotow, T., Peters, C., von Figura, K., Mizushima, N., Saftig, P., Uchiyama, Y. Participation of Autophagy in Storage of Lysosomes in Neurons from Mouse Models of Neuronal Ceroid-Lipofuscinoses (Batten Disease). Am. J. Pathol. 167(6): 1713-28; 2005.
- Koike, M., Nakanishi, H., Saftig, P., Ezaki, J., Isahara, K., Ohsawa , Y., Schulz-Schaeffer, W., Watanabe, T., Waguri, S., Kametaka, S., Shibata, M., Yamamoto, K., Kominami, E., Peters, C., von Figura, K., Uchiyama, Y. Cathepsin D deficiency induces lysosomal storage with ceroid lipofuscin in mouse CNS neurons. J. Neurosci. 20(18): 6898-906; 2000.
ひと言!
大学院の頃から中枢神経系におけるリソソームタンパク分解酵素の役割について研究を行ってきました。同時に、細胞生物学領域における超微形態学的なアプローチを極めたいと思っております。
Web page
http://www.med.osaka-u.ac.jp/pub/anat1/index.html
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