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リン脂質とタンパク質を介したオートファジー制御機構の解析

写真:野田健司

大阪大学 微生物病研究所
細胞制御分野 准教授
野田 健司

様々なタンパク質分解機構の中でオートファジーに最も特徴的な側面は新規な生体膜構造による分解基質の囲い込みがおこることであり、本研究ではこの生体膜のダイナミックな生成機構を解明することを目的とする。私たちはオートファジーに特異的な脂質が関与することを発見し報告してきた。そこでこれら膜成分に注目しながら新規の膜の生成機構へアプローチする。

第一にホスファチディルイノシトール3リン酸(PI3P)に注目する。これまで酵母においてオートファゴソーム形成に特異的なPI3キナーゼ複合体が関与することを示したが、最近ほ乳類PI3キナーゼに結合するタンパク質を複数同定しており、これがオートファジーにおいてどのように関わるかを解析する。第二にPI3Pのオートファジーにおける役割を探求する。PI3Pはオートファゴソーム形成初発段階に役割があると予測されているが、本研究ではオートファゴソーム形成の後期過程における機能にも注目する。

さらにホスファチジルエタノールアミンPEへのAtg8/LC3結合反応の制御機構に注目する。これまでAtg8が未知なる脂質分子と共有結合をするというモデルを遺伝学的に提唱し、その分子がPEであることを証明した。これはユビキチン化様の反応を経て結合するが、しかし細胞内のどの部位でその反応が起こるかは未だ不明である。本研究ではこれらの問題に迫ることを目指し、新たな作業モデルを構築していく。

本研究課題に関連する代表的論文3報

  1. Kihara, A., Noda, T., Ishihara, N., and Ohsumi, Y. (2001). Two distinct Vps34 phosphatidylinositol 3-kinase complexes function in autophagy and carboxypeptidase Y sorting in Saccharomyces cerevisiae. J Cell Biol 152, 519-530.
  2. Ichimura, Y., Kirisako, T., Takao, T., Satomi, Y., Shimonishi, Y., Ishihara, N., Mizushima, N., Tanida, I., Kominami, E., Ohsumi, M , Noda T., Ohsumi, Y. (2000). A ubiquitin-like system mediates protein lipidation. Nature 408, 488-492.
  3. Kimura, S., Noda, T., and Yoshimori, T. (2007). Dissection of the autophagosome maturation process by a novel reporter protein, tandem fluorescent-tagged LC3. Autophagy 3, 452-460.

ひと言!

どのような分子機構で新規に膜が生じるのかというのは、非常に興味深い問題です。
この特定領域研究の期間に一歩でもその謎に迫れればと願っています。

Web page

http://www.biken.osaka-u.ac.jp/lab/cellreg/

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