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九州大学 大学院医学研究院
分子生命科学系部門
機能高分子設計学講座 准教授
岡 敏彦
ミトコンドリアは細胞内での主なエネルギー生産の場であり、欠くことの出来ないオルガネラである。殆どのミトコンドリアタンパク質は核にコードされており、遊離型リボソームで合成後に、ミトコンドリアに運ばれる。そこで、最初にミトコンドリア外膜に存在するTom複合体に認識され、外膜、膜間スペース、内膜、マトリックスの各場所に輸送されて行く。つまり、Tom複合体はミトコンドリアタンパク質の最初のゲートであり、外膜でのその存在量は厳密に制御されなければならない。例えば、培養細胞でTom複合体のサブユニットであるTom22にFLAGタグを付加し安定発現株を作成すると、Tom22-FLAGの発現した分だけ内在性Tom22の発現量が減少し、結果としてTom22過剰発現株を得ることは出来ない。この様に、異なるプロモーター下でTom複合体サブユニットを発現させてもその発現量が上昇しないことから、ミトコンドリア外膜上には過剰量のタンパク質を積極的に分解する機構が存在すると考えられる。
Tom複合体サブユニットの一つであるTom20は、他のサブユニットであるTom22の発現をRNA干渉法を用いて抑制すると、定常状態でその存在量が半減する。パルス・チェース実験より、Tom22の発現抑制に伴ってTom20の半減期が15時間から4時間程へと短縮されることから、積極的に分解されていることが明かとなった。この分解は、プロテアソーム阻害剤エポキソマイシン(EXM)により完全に抑圧された。これらの結果から、Tom20はTom22が無くなりTom複合体が壊れることで、よりプロテアソーム分解を受け易くなったと考えられた。
本研究では、Tom20の分解に関わるユビキチン化酵素の同定と、それらの酵素のミトコンドリアタンパク質輸送と外膜タンパク質の品質管理における生理的意義を明らかにすることを目的としている。
http://www.med.kyushu-u.ac.jp/cell/(今年度中に変更予定あり)