> サイトマップ

中枢神経特異的ユビキチンリガーゼKspotによるシナプス制御

写真:岡野ジェイムス洋尚

慶應義塾大学 医学部
生理学教室 准教授
岡野ジェイムス洋尚

精神神経症状を呈した担癌患者の血清中にみられた自己抗体をもとに、その標的抗原として新規ユビキチンリガーゼKspotを同定した。Kspotは神経系特異的に発現するF-box型E3リガーゼであり、SCF複合体を形成し未同定ではあるが基質分子をユビキチン化し分解に導くことがわかっている。またKspotが培養神経細胞の前シナプス終末において神経伝達物質の放出を抑制することを示す知見を得ている。これらの結果から、Kspotは神経細胞におけるシナプス伝達の効率を制御している可能性が高く、Kspotの機能不全は神経細胞間の伝達異常を引き起こし得ると考えられる。タンパク質分解システムに破綻をきたすと有害なタンパク質が蓄積し、二次的に毒性を示す例が多く知られているが、特に神経細胞は分裂によって細胞の構成因子をリセットする能力を持たないため、異常なタンパク質の蓄積が即座に機能不全を引き起こす可能性が高い。本研究計画では、精神神経疾患の病態カスケードにKspotが関与している可能性を考え、哺乳類の中枢神経系におけるKspotの生理機能を解明することにより、神経伝達障害の分子機序との関連を明らかにしたい。

本研究課題に関連する代表的論文3報

  1. Yano M, Okano HJ, Okano H. (2005) Involvement of Hu and hnRNP K in neuronal differentiation through p21 mRNA post-transcriptional regulation. J Biol Chem 280: 12690-12699.
  2. Okano HJ, Park WY, Corradi JP, Darnell RB. (1999) The cytoplasmic Purkinje onconeural antigen cdr2 down-regulates c-Myc function: implications for neuronal and tumor cell survival. Genes Dev. 13: 2087-2097.
  3. Tada H, Ishii S, Kimura H, Hattori H, Okada Y, Suzuki N, Okano HJ. (2007) Identification and Evaluation of High-titer Anti-Sox Group B Antibody in Limbic Encephalitis. Inflammation and Regeneration. 27: 37-44.

ひと言!

神経幹細胞において、増殖から分化・成熟へのスイッチングがどのような分子メカニズムで起こっているのか興味を持って研究してきました。本研究では特に、神経分化・成熟に関わる因子の増減が転写後調節機構によって調節されるメカニズムを明らかにしていきたいと思っています。

Web page

http://web.sc.itc.keio.ac.jp/physiol/okano/

▲このページの先頭へ