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名古屋大学 大学院理学研究科
附属臨海実験所(生命理学専攻)
発生生化学講座 教授
澤田 均
本申請者は,受精過程のなかでも特に精子が卵保護層を通過する際に、精子由来の酵素が卵黄膜タンパク質(精子受容体:HrVC70)を細胞外でユビキチン(Ub)化すること、またそれを精子細胞膜結合型プロテアソームが分解することを、原索動物マボヤを用いて明らかにしてきた(文献1,2)。この現象は当初ホヤの受精に限られる現象ではないかと考えていたが、最近哺乳類においても同様の現象があることが報告され、受精に関与する細胞外Ub-プロテアソームシステム(UPS)の解明が強く望まれている。また、最近我々は、ウニでもUPSが受精時に重要な役割を果たしているという知見を得た(文献3)。特に、ライシンとして精子の卵黄膜通過に関与という点ではホヤと同様であるが、それに加えて先体反応(先体胞の開口分泌)にも関与していることが、阻害剤を用いた実験から明らかになってきた。ウニでは受精における精子プロテアソームの機能解析はほとんど行われておらず、細胞外Ub化酵素に関しては全く報告がない。本研究では、ウニやホヤを用いて、Ub化酵素とプロテアソームの構造機能解析と局在性の検討、さらに活性化機構と生理的基質の探索を行う。対象とする現象としては、先体反応と卵黄膜通過の2つのプロセスに焦点を絞る予定である。
細胞外のユビキチンプロテアソームシステムの研究はまだ始まったばかりで、多くの方々にはまだ信じてもらえない分野でもある。しかし、少なくとも受精の場では、哺乳類においてもこのシステムが機能することが米国の研究者により最近報告され、また我々もホヤやウニでこのシステムが卵黄膜ライシンとして機能していることを見いだしているので、新口動物全般で見られる現象ではないかと考えている。この発見をきっかけに、全く新しい細胞外でのユビキチン-プロテアソームワールドを広げたいと思っている。