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脂肪滴に局在する蛋白質分解機構の解析  

写真:反町洋之

名古屋大学
大学院医学系研究科
分子細胞学分野
教授
藤本 豊士

脂肪滴は燐脂質一重層で被われ、脂質エステルをコアとする特殊なオルガネラである。脂肪滴が単なる脂質エステルの貯留場所ではなく、種々の機能を担うことが急速に明らかになってきた。我々はプロテアソーム、オートファジーのいずれか一方を阻害すると、肝細胞の脂肪滴にユビキチン化されたApolipoprotein B-100 (ApoB) が集積すること (MBC, 2006)、ApoBの集積する脂肪滴が小胞体膜中にあること、小胞体内腔で脂質付加されたApoBを輸送・分解する特殊な経路の存在が予想されること (JCS, 2008) などを報告してきた。脂肪滴のプロテオミクス解析を行ったところ、ユビキチン・プロテアソーム系に関わると予想される分子が多数同定された。現在、この結果を出発点として、脂肪滴に存在する蛋白質分解系について解析中である。

さしあたっての目標は、脂肪滴近傍の蛋白質分解系を構成する分子の局在、分子間相互作用、関連する分解基質を明らかにし、細胞機能への関わりを解明することである。さらにこれらの蛋白質輸送・分解系が働く際には、脂肪滴形成や分解の過程が関係するのではないかと予想し、その観点からも検討を進めている。膜脂質の局在をナノレベルで解析する方法(PNAS, 2009)も動員して、多角的な検討を行いたい。

本研究課題に関連する代表的論文3報

  1. Fujita A, Cheng J, Tauchi-Sato K, Takenawa T, Fujimoto T.: A distinct pool of phosphatidylinositol 4,5-bisphosphate in caveolae revealed by a nanoscale labeling technique.  Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 106:9256-61, 2009.
  2. Ohsaki, Y., Cheng, J., Suzuki, M., Fujita, A., Fujimoto, T.: Lipid droplets are arrested in the ER membrane by tight binding of lipidated apolipoprotein B-100. J. Cell Sci., 121: 2415-2422, 2008.
  3. Ohsaki, Y., J. Cheng, A. Fujita, T. Tokumoto, and T. Fujimoto: Cytoplasmic lipid droplets are sites of convergence of proteasomal and autophagic degradation of apolipoprotein B. Mol. Biol. Cell, 17: 2674-2683, 2006.

ひと言!

「脂の上にも3年(実は10年)」でいよいよ脂肪滴の面白さが分かってきました。タンパク質分解と脂肪滴の関係は水と油よりずっと密接なようです。領域メンバーの方々との交流を通じて、新たな発展があることを期待しています。

Web page

http://www.med.nagoya-u.ac.jp/cel-bio/index.htm

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