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首都大学東京
大学院理工学研究科
生命科学専攻
教授
川原 裕之
ユビキチン依存的タンパク質分解系において、プロテアソームによる基質認識にはポリユビキチン鎖を捕捉するユビキチンレセプターが必須である。近年、多数のユビキチン結合蛋白質が同定され、それによってユビキチン鎖の運搬と識別経路の多様性が提唱されつつある。我々はこれまで、ユビキチンレセプターと物理的・遺伝学的に相互作用する因子を同定することによって、細胞の分化や死の制御系とユビキチン依存的タンパク質分解系との関連を調べてきた。その結果、ユビキチンレセプターRPN-10が細胞の分化運命の決定に極めて重要であること、また新しい2型ユビキチン様蛋白質Scythe/BAG-6が、プロテアソーム基質の認識と輸送、異常蛋白質の封入体形成、新合成蛋白質のクオリティーコントロールに関わる事を見いだした。また、Scythe/BAG-6と相互作用する新しいユビキチン化酵素群を同定し、それらの機能的解析を進めている。最近ではScythe/BAG-6がDRiPsの代謝を介して免疫系の制御にも関わる可能性が浮かび上がりつつある。本研究では、細胞内基質を峻別するユビキチン鎖認識蛋白質の特異性獲得の分子機構を明らかにすると同時に、他の蛋白質分解系や翻訳系との共役によるタンパク質代謝の調節機構に着目して解析を進めていくことを目指している。
蛋白質分解系に興味を持って幾つかの実験を進めるうちに、そのどれもがいつのまにか蛋白質合成と密接に関わることが解ってきました。生化学と遺伝学をうまく組み合わせて両者の関連を解き明かしていければと思っています。