ESCRT関連因子との相互作用によるカルパイン7/PalBHの生理機能
名古屋大学
大学院生命農学研究科
応用分子生命科学専攻
分子細胞制御学研究分野
教授
牧 正敏
動物において組織普遍的に存在するm-、μ-カルパインは、C末端側に連続した5つのEF-hand(PEF)ドメインをもつカルシウム依存性のプロテアーゼである。カビにはPEFドメインを欠きN末端側にMIT様ドメインをもつ非典型的カルパインPalBが存在し、pH環境に応答して転写因子の限定分解に関与し、遺伝子発現制御を司っている。哺乳類にも、PalBホモログであるカルパイン7/PalBH(以下CAPN7)が存在するが、酵素活性を有するか否かを含め生理機能は全く不明である。一方、ESCRTは、エンドソーム内部小胞形成、ウイルス出芽、細胞質分裂などにおける選別輸送・細胞膜切断に関わる多因子複合体システムであるが、カルパイン小サブユニット様のPEFタンパク質であるALG-2の相互作用因子がESCRTシステムに含まれ(ESCRT-IおよびAlix)、また、CAPN7がMITドメインを介してESCRT-III経路に組み込まれることが明らかになってきた。CAPN7と相互作用する因子が、酵素の活性化や基質のリクルートに関わっている可能性がある。本研究は、CAPN7の自己消化および人工基質切断を指標とした酵素反応解析、新規ESCRT-III様因子IST1との相互作用解析やMITドメインおよびプロテアーゼドメインの構造生物学的解析を中心にCAPN7の生理機能解明に向けた基礎的知見の集積を目指す。
本研究課題に関連する代表的論文3報
- Yorikawa, C., Takaya, E., Osako, Y., Tanaka, R., Terasawa, Y., Hamakubo, T., Mochizuki, Y., Iwanari, H., Kodama, T., Maeda, T., Hitomi, K., Shibata, H., Maki, M. (2008) Human calpain 7/PalBH associates with a subset of ESCRT-III-related proteins in its N-terminal region and partly localizes to endocytic membrane compartments. J. Biochem. 143, 731-7452.
- Shibata H, Suzuki H, Kakiuchi T, Inuzuka T, Yoshida H, Mizuno T, Maki M. (2008) Identification of Alix-type and non-Alix-type ALG-2-binding sites in human phospholipid scramblase 3: Differential binding to an alternatively spliced isoform and amino acid-substituted mutants. J Biol Chem. 283, 9623-9632.
- Suzuki H, Kawasaki M, Inuzuka T, Okumura M, Kakiuchi T, Shibata H, Wakatsuki S, Maki M. (2008) Structural basis for Ca2+-dependent formation of ALG-2/Alix peptide complex: Ca2+/EF3-driven arginine switch mechanism. Structure. 16, 1562-1573.
ひと言!
カルパイン7のプロテアーゼドメインの活性中心残基は、一次構造上、保存されています。従って、酵素活性が容易に検出できないカルパイン7にも必ずプロテアーゼ活性があり、活性化因子も存在すると信じています。ニワトリが空を飛ぶ程度かも知れませんが、それでも羽(プロテアーゼドメイン)はそのためにあると自分に言い聞かせています。
Web page
http://www.agr.nagoya-u.ac.jp/~mcr/
▲このページの先頭へ