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神経変性疾患におけるタンパク質分解経路間のクロストークの個体レベルでの統合的理解

写真:反町洋之

国立精神・神経センター
神経研究所
疾病研究第四部
室長
永井 義隆

近年、アルツハイマー病、パーキンソン病、ポリグルタミン(PolyQ)病など多くの神経変性疾患において、タンパク質のミスフォールディング・凝集が神経変性を引き起こすという共通の発症分子メカニズムが考えられるようになった。私たちはPolyQ病を最適のモデルと考え、タンパク質のミスフォールディング・凝集を標的として、これまでPolyQ結合ペプチドQBP1や分子シャペロン誘導剤などを用いた治療法開発研究を進めてきた。一方で、既に凝集したタンパク質を除去するという視点からは、タンパク質分解システムの活性化の方がむしろ重要な治療戦略であると考えられる。しかしながら、PolyQタンパク質の分解機構、さらに病態におけるタンパク質分解システムの異常についてはこれまで十分には解明されていない。

本研究では、ユビキチン・プロテアソーム系とオートファジー・リソソーム系分解経路間のクロストークを視野に入れ、ショウジョウバエモデルを用いて神経変性疾患におけるタンパク質分解システムの異常を個体レベルで統合的に解明する。本研究により、タンパク質分解システムを標的とした神経変性疾患に対する新たな治療法開発への道が拓ける。

本研究課題に関連する代表的論文3報

  1. Fujikake N., *Nagai Y., Popiel H.A., Okamoto Y., Yamaguchi M., Toda T. Heat shock transcription factor 1 (HSF1)-activating compounds suppress polyglutamine-induced neurodegeneration through induction of multiple molecular chaperones. J. Biol. Chem.283: 26188-26197 (2008).
  2. Takahashi Y., Okamoto Y., Popiel H.A., Fujikake N., Toda T., Kinjo M., *Nagai Y. Detection of polyglutamine protein oligomers in cells by fluorescence correlation spectroscopy. J. Biol. Chem.282: 24039-24048 (2007).
  3. *Nagai Y., Inui T., Popiel H.A., Fujikake N., Hasegawa K., Urade Y., Goto Y., Naiki H., Toda T. A toxic monomeric conformer of the polyglutamine protein. Nat. Struct. Mol. Biol. 14: 332-340 (2007).

ひと言!

タンパク質分解に関しては素人ですが、神経変性疾患の研究は、タンパク質構造の生化学的・生物物理学的解析から、ショウジョウバエ・マウスモデル、薬剤スクリーニングまで幅広く行っています。本特定領域では、タンパク質分解の専門家の方々からいろいろ勉強させていただきたいと思います。

Web page

http://www.ncnp.go.jp/nin/guide/r4/index.html

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