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慶應義塾大学 医学部
生理学教室 准教授
岡野ジェイムス洋尚
精神神経疾患は多くの因子の複合的機能不全が原因と考えられており、特にシナプスの構築、神経伝達物質の放出調節など、シナプス近傍において神経細胞の伝達機能に関わる因子群が病態生理に関与している可能性が指摘されている。私たちは、精神神経症状を呈した担癌患者の血清中にみられた自己抗体をもとに、その標的抗原として神経系特異的に発現するF-box型ユビキチンリガーゼKspot(Fbxo45)を同定した。電気生理学的解析により、Kspotが成熟したシナプスで起こる神経伝達物質の放出に対して抑制的に作用することが明らかになった。さらにKspotが神経伝達物質放出制御因子Munc13-1と結合し、Munc13-1タンパク質の細胞内半減期を顕著に短縮していることが示されたことから、KspotによりMunc13-1が分解に導かれている可能性が強く示唆された。本研究では、神経シナプスにおけるタンパク質分解制御系であるKspotがニューロン間の情報伝達効率を制御している可能性を考え、Kspotコンディショナルノックアウトマウスを使ったin vivo解析を行い、精神障害発症の分子機序との関連を明らかにしたいと考えている。
神経幹細胞において、増殖から分化・成熟へのスイッチングがどのような分子メカニズムで起こっているのか興味を持って研究してきました。本研究では特に、神経間の伝達効率を制御する因子の増減が転写後調節機構によって調節されるメカニズムを明らかにしていきたいと考えています。