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カルパインによる生体のモジュレーション

写真:反町洋之

理化学研究所
細胞システムモデル化研究チーム
佐甲細胞情報研究室
基幹研究所研究員
白 燦基

生体機能を調節するタンパク質やストレス等で損傷を受けたタンパク質は,ユビキチン−プロテアソーム系によって速やかに分解される。プロテアソームはユビキチン化タンパク質を選択的に補足し分解する非常に巨大で複雑なプロテアーゼ複合体であり、その重要性から注目されているが細胞生物学的解析とくに生細胞に置ける動的な解析が遅れている。 本研究課題は、プロテアソームが生細胞でどのような状態で存在し,どのように形成されるのか、ユビキチン化タンパク質はどこで分解されるのかという諸問題を新しいバイオイメージング解析手法である蛍光相関分光法(FCS)および蛍光相互相関分光法(FCCS)法を用いて解明する。FCS法およびFCCS法とは蛍光強度の揺らぎより対象分子の大きさ、絶対濃度、分子間相互作用(解離定数)を生細胞の中で決定できる方法である。まず、全プロテアソームタンパク質のうち,複合体を形成している割合とその絶対数,そして核内と細胞質でこれらは異なるのかについて解析する。そして、細胞周期,親と娘細胞間、各種ストレスなどの外的環境でプロテアソームに動的変化が起こるのかについて検討することで、細胞内のどこでどのようにプロテアソームが会合していくのか解析する。

FCS,FCCS法を用いてユビキチン−プロテアソーム系を生細胞で非侵襲的に解析することにより,本経路の重要なファクターの一つ,時空間的制御について新しい知見が得られることを期待している。

本研究課題に関連する代表的論文3報

  1. Kawai-Noma S., Pack, C., Tsuji T., Kinjo, M., and Taguchi H. “Single mother-daughter pair analysis to clarify the diffusion properties of yeast prion Sup35 in guanidine-HCl treated [PSI+] cells”. Genes to Cell 14:1045-1054 (2009).
  2. Park, H., Pack, C, Kinjo, M., and Kaang B. “In vivo quantitative analysis of PKA subunit interaction and cAMP estimation using dual color fluorescence cross correlation spectroscopy” Mol. Cells 26: 87-92 (2008).
  3. Pack, C., Saito, K., Tamura, M., and Kinjo, M. “Microenvironment and effect of energy depletion in the nucleus analyzed by mobility of multiple oligomeric EGFPs ” Biophys. J. 91: 3921-3936 (2006).

ひと言!

FCS/FCCSは従来のバイオイメージング法に比べ低濃度(100pM〜1μM)において溶液並びに細胞計測から絶対値のパラメター解析が可能なため、イメージングでは見えて来ないところまで新しい知見を得ることが可能だと信じている。例えばLC3核にも局在が確認されているようだが、そこで何をしているかなど細胞質と核内動態を比べることで何かの糸口が見つかるかも知れない。その他にも重要な機能を持ちながらも発現が少ない蛋白質の細胞内解析にも力を発揮すると期待する。そのために生細胞を周期や細胞質、核質、核小体に分けて解析し、得られた物理化学的パラメターを絶対値として評価する計測システムを構築しつつある。これらの解析基盤をもとに本研究以外にも班会員の皆と交流を深めることで、蛋白質分解制御の裏に隠された分子機構を見つけ出したいと考えている。

Web page

http://www.riken.jp/cell-info/

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