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京都大学
大学院農学研究科
応用生命科学専攻
教授
阪井 康能
オートファジーにはあまり選択性がなく、その主な生理機能はバルクな細胞内分解であると考えられてきたが、ペルオキシソーム・ミトコンドリアなどのオルガネラや細胞質タンパク質が、より選択的にオートファジーで分解される事実が明らかとなりつつある。またこのようなオルガネラ分解における選択性発現は、液胞/リソソームが、直接、被分解物を取り囲むミクロオートファジーにおいてより顕著である。
これまで酵母 Pichia pastoris を用いて、ペルオキシソームの選択的分解過程であるミクロペキソファジーを解析する過程で、新たな構造体であるMicropexophagic Membrane Apparatus (MIPA)を発見、エルゴステロールグルコシド合成酵素であるAtg26とPI4Pシグナルの関与などを明らかにしている。また出芽酵母では、脂質滴分解がミクロオートファジーにより分解されること、植物病原性カビではペキソファジーが宿主への感染に必要であることもわかってきた。
本研究では、このようなオートファジーにおける特異的細胞内分解のメカニズム、1)分解基質のまわりに選択的に物理的バリアである膜構造(MIPA, 液胞膜、オートファゴソーム)をつくる分子装置の同定とメカニズムの解明、2)オートファゴソームと液胞との膜ダイナミクスの時空制御機構、3)リン脂質を中心とした細胞内シグナル伝達制御機構、4)真核微生物におけるオルガネラ・オートファジーの生理的意義について明らかにしたい。
タンパク質分解研究をしていると、”死の美学とその追求”といったサムライ的精神を、タンパク質のような分子にも感じることがあります。分解の後につながる何か、それが“新生”であり、“死して生きる意味(生理的意義)”にあることを思います。“輪廻転生“という言葉に相当する英語はありません。このような感性こそが、我々のタンパク質分解研究の、独創性の原点にあるものではないか。米国で、たまたまオートファジー研究に足を突っ込んで、早、十数年。今、なお、そういう思いがあります(計画班最年長研究者)。