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東京工業大学
統合研究院 先進研究機構
大隅研究室 特任助教
鈴木 邦律
我々は出芽酵母を材料にしてオートファジーの研究を進めている。オートファジーのプロセスの中心を担うのはオートファゴソーム(以下AP)と呼ばれる脂質二重層の二重膜で区画化されたオルガネラである。形成されたAPは細胞内分解コンパートメントである液胞/リソソームと融合し内容物ごと分解される。オートファジーは基本的に非選択的な分解システムであり、APは形成される過程で周辺の細胞質成分を無差別に取り込むと考えられてきた。
我々の研究により、典型的な細胞質酵素であるAld6(acetaldehyde dehydrogenase)がAPへと選択的に取り込まれることが示された。最近になって、これまで非選択的な積荷の代表格であると考えられてきたリボソームでさえも、ある程度選択的にAPへと取り込まれるという報告がなされた。これらの事実から、『オートファジーは本質的に非選択的な分解システムである』という考えを再検証する必要が生じた。そこで、我々はAPを生化学的に単離し、その画分を質量分析することにより、オートファジーにより分解されるタンパク質を網羅的に同定しようとしている。同定されたタンパク質に対する選択性の有無、選択性を付与するメカニズム、そしてそれらのタンパク質を分解する生理的な意義を解析する計画である。
オートファジーは真核生物に極めて普遍的な分解システムである。従って、オートファジーによる分解の生理的意義の最も根幹となる部分は出芽酵母から高等動植物にまで共通だと考えられる。そういった展望をもって出芽酵母のオートファジーを解析している。